なぜ大規模修繕工事の「談合」に建築士が関わっていたのか
2025年6月27日

大規模修繕工事の現場では、一級建築士事務所による「設計監理」が行われることが一般的です。しかし、その設計監理費が意外なほど安価であるにもかかわらず、建築士がきちんと対応しているように見える──そう感じたことはありませんか?
実はその背景に「談合」や「バックマージン」の構造が隠れているケースもあるのです。
定例会議・現場巡回・施工対応──これが「月20〜50万」の内訳
設計監理には、施工会社との打ち合わせや定例会議への出席、現場の進捗確認、写真や報告書の作成、仕様変更の調整など、多岐にわたる対応が含まれます。
さらに、施主への説明資料の準備、品質・工程・安全の三方向にわたる監督体制の構築など、見えない作業も多く存在します。
そのうえで、施工不良や仕様不一致の指摘・是正確認といった専門性の高い判断を日常的に求められます。
なぜ安くても引き受けられたのか?──バックマージンの存在
一部の現場では、施工会社から建築士事務所に数百万円単位のバックマージンが渡っていたことが談合事件で明るみに出ました。
工事費用が数億円規模に及ぶ大規模修繕において、施工会社は工事原価に対して15〜25%の利益を見込めることが多く、そのうち一部を設計事務所へ渡しても利益を損なわないという構造がありました。
つまり、「安くても請け負える理由」は別にあったというわけです。
資格の重みと人件費の現実
一級建築士の資格は非常に難易度が高く、学校に通いながら何年もかけて取得する方も少なくありません。取得には数百万円単位の学費と、多くの時間と労力がかかります。
そんな建築士を雇い、営業・書類作成・連絡調整の業務までまわすには、それ相応の人件費がかかります。「月額20〜50万円」という報酬が、決して余裕のある数字ではないことがわかります。
設計監理費の基準は“正当な価格”か?
設計監理費については、国交省や自治体が提示する標準価格が存在します。
しかし、実際の現場では「その金額ではとてもやっていけない」と言われることも多く、結果として事務所側が「別ルートで収益を補う」構造が暗黙のうちに形成されていたのかもしれません。
今後の業界健全化を考えるなら、こうした価格設定のあり方を見直し、設計監理の価値が正当に評価される制度づくりが求められます。
まとめ:健全な設計監理体制のために
一級建築士事務所の設計監理が「安くても成立している」ように見えた背景には、談合やバックマージンといった構造的な問題が潜んでいた可能性があります。
建築士の技術や責任が正当に評価され、適切な価格で健全に業務が遂行される──そんな業界構造こそが、今求められています。