施工管理会社が生き残るための3条件——2024年問題・DX・多角化

この記事を書いた人

建築施工管理技士/宅地建物取引士/Webエンジニア
・2級建築施工管理技士(取得年:2024年)
・宅地建物取引士(取得年:2020年)
・改修工事施工管理歴:6年(2018年〜現在)
・商業施設改修・修繕200件、マンション大規模修繕15棟
・不動産業務経験:買取再販・売買仲介 3年
・Mac活用13年

淘汰される施工管理・生き残る施工管理について

この記事でわかること

  • 「何もしない施工管理会社」が具体的にどう淘汰されていくのか
  • 2024年問題・働き方改革が施工管理会社の存続に与える影響
  • 生き残る施工管理会社が持つべき3つの具体的条件
  • 施工管理者個人として複数の軸を持つことがなぜ必要なのか

【第2回】AIで施工管理の仕事は消えるのか——DX時代に変わる建設業の働き方

第1回・第2回では、建設業の情報独占構造とAI・DXが施工管理業務に与える影響を整理した。
この記事では「では実際にどういう施工管理会社が生き残り、どういう会社が消えていくのか」という問いを考える。

私の持論ではあるが、
消えていくのは「資格と看板だけを持っている施工管理会社」と思う。
そしてその淘汰は、AI・DXによる直接的な代替というより、複数の構造変化が重なることで起きる。

「何もしない施工管理会社」はなぜ今まで生き残ってきたのか

「何もしない施工管理」に市場価値はない

施工管理会社の中には、元請けとして看板を掲げているだけで、実態は「転送業者」に近い会社がある。

下請けから書類を受け取ってハンコを押し、発注者に渡すだけ。現場に顔を出すのは月に数回。現場にはいるけど、施工内容も仕様も全く把握しておらず、施工についての相談についての判断ができない。
そういう会社が間に入ることで、工事費の2〜3割が抜かれる構造は、業界の中では広く知られた話だ。

この構造が長年続いてきたのには理由がある。

建設業法では一定規模以上の工事(建築一式工事で請負金額1,500万円以上等)は建設業許可が必要であり、許可を持つ元請けが工事全体を管理する義務がある。
資格・許可という「制度の壁」が、実質的に施工管理会社の存在を守ってきた面がある(国土交通省:建設業許可制度の概要)。

加えて、発注者側のリテラシーが低かったことも大きい。

工事を年に1回発注するかどうかという発注者は、施工管理会社が実際に何をしているか判断する基準を持っていない。
だから「実績があります」「資格保有者がいます」という看板だけで発注先に選ばれることができた。

「何もしない施工管理会社」の典型的な特徴
  • 現場に常駐せず、週1〜2回の顔出しで終わる
  • 施工写真・報告書を下請けに丸投げ
  • 不具合が出たときに「下請けの責任」と言い切る
  • 工事中のリスク・変更点を発注者にリアルタイムで報告しない・できない

2024年問題と働き方改革——施工管理会社を直撃する二重の圧力

逃げ場のない業界の二重の圧力

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用された(いわゆる「2024年問題」)。
年間720時間・月100時間未満という規制は、長時間労働が常態化していた建設業にとって構造的な変革を迫るものだ(厚生労働省:建設業の時間外労働規制)。

この規制への対応で、施工管理会社は二重の圧力を受けている。

一つは「残業で補っていた管理工数が使えなくなる」問題だ。

書類作成・写真整理・報告書作成などを残業で消化していた会社は、そのまま規制に対応すれば管理品質が下がる。
管理品質を維持しようとすれば人員を増やすか、DXで効率化するかの二択になる。
人員を増やせない中小企業は、DXか品質低下かの選択を迫られている。

もう一つは「週休2日制への対応」だ。

2024年度から公共工事では週休2日(4週8休)が原則化された。
民間工事でも徐々に浸透しつつある。従来の工期設定・人員計画を根本から見直す必要があるが、これに対応できない施工管理会社は公共工事の受注資格を失うリスクがある。

ぱんたロイド
2024年問題で残業が規制されて、実質的に「残業で帳尻を合わせていた管理会社」のビジネスモデルが成り立たなくなった。DXで効率化できる会社と、そうでない会社の差が急速に開いている。

発注者リテラシーの向上——「次回の相見積もり」が生まれる時代

発注者側の変化も施工管理会社を取り巻く環境を変えている。大規模修繕を繰り返してきたマンション管理組合や、複数施設を持つ企業の担当者は「施工管理会社が何をしているか」を理解し始めている。

特に2回目・3回目の発注経験がある発注者は、前回との比較ができる。

「前の会社は月に2回しか現場に来なかったのに今回は毎週来る」
「報告書の内容が全然違う」
「工事中に起きた問題をリアルタイムで連絡してくれた」——
こういった評価基準が発注者の中に蓄積されていく。相見積もりの習慣と組み合わさると、「何もしない会社」が次回の発注で外されるサイクルが生まれる。

建設業振興基金が推進する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」も、技能者の経験・資格・能力を見える化する取り組みとして、発注者側の判断基準を整備する方向に働いている(建設業振興基金:建設キャリアアップシステム)。

生き残る施工管理会社の3つの条件

生き残る施工管理会社の3つの条件

第1回から第3回を通じて整理してきた内容を踏まえると、これからの施工管理会社が持つべき条件は3つに集約される。

条件① 職人ネットワークの質——AIにも検索にも出てこない技術者を知っているか

第1回で詳しく書いたように、本当に腕のいい専門業者はネット上に存在しない。

長年の取引実績・現場での評価・難しい工事でも動いてくれる信頼関係——
これは数年以上かけて積み上げるしかない。

AIがどれだけ進化しても、「この現場ならあの職人に頼める」という判断は人間の経験値にしかできない。

ただし注意が必要なのは、「昔からの付き合いだから」という理由だけで非効率な業者を使い続けることは発注者にとって良くない。
ネットワークの質を定期的に見直し、若手職人・新興の専門業者にも目を向けることが求められる。

条件② 現場での判断力——「見て・考えて・決める」能力

不具合の原因を実際に現場で見て判断する。

設計・施工・維持管理を一気通貫で考える。
突発的なトラブルに対してその場で方針を決める。
これらは経験の積み重ねでしか身につかない能力だ。

施工管理として6年やってきた中で、「教科書には載っていない判断」を求められた場面は数え切れない。
既存建物の図面と実際の状態が全く違う、想定外の埋設物が出てきた、工事中に雨漏りが悪化した——こういう場面での対応力は、AI検索でも書類作成ツールでも代替できない。

条件③ 発注者との信頼関係——問題が起きたときに正直に動けるか

施工管理で一番難しいのは、技術的な問題ではなく「人との関係」だと思っている。

工事中に予期しない問題が起きたとき、それを正直に発注者に伝えて一緒に解決策を考えられるか。コスト削減の提案を忖度なく出せるか。都合の悪い情報を隠さないか。

これは資格でも経験年数でも測れない。ただ、この信頼を積み重ねた施工管理者・施工管理会社は、AIやプラットフォームが台頭しても発注者から選ばれ続ける。

生き残る施工管理会社の3条件まとめ
  • ①職人ネットワークの質:検索にもAIにも出てこない信頼できる専門業者を複数の工種で持っている
  • ②現場の判断力:不具合・トラブル・設計変更に対して、その場で根拠ある方針を決められる
  • ③発注者との信頼関係:都合の悪い情報も正直に伝え、長期的な関係を築いている

「施工管理だけで食う」時代の終わりと、個人としての多角化

個人として施工管理者としての生存戦略

施工管理会社という「組織」の話とは別に、施工管理者「個人」としての話もしておきたい。

私個人の意見としては、施工管理の仕事だけで食っていこうとは思っていない。
宅建士としての不動産知識・Web制作とIT活用の経験・AIを組み合わせての開発——複数の軸を持ち、いずれは建設業から離れたいとすら考えている。

これは私の個人的な考えとして参考にする程度でいいのだが、
施工管理の管理技術がDXで圧縮されていく中で、「施工管理しかできない人材」の市場価値は相対的に下がるのは必須である。

一方で「施工管理の知識を持ちながら、不動産・DX・IT・営業など他の領域でも動ける人材」の希少性は上がる。
施工管理という仕事の価値が下がるのではなく、「施工管理だけをやる人」の価値が下がる、というのが私の見立てだ。

AIによるシンギュラリティ、建設ロボットによる自動化など、今後建設業界が大きく変わることは必須である。
そんな中で、「施工管理」の新たな位置付けを模索していくことが必須。遠い未来の話では、決してないと思うのだ。

ぱんたロイド
「施工管理はなくならない」と「施工管理だけでは食えなくなる」は両方同時に正しい。管理の仕事は残るけど、それだけに頼れる時代は終わっていく。

シリーズまとめ——AIに消えてほしい施工管理と、残ってほしい施工管理

3回を通じて言いたかったことを最後にまとめる。

資格と看板だけで中間マージンを取る施工管理会社は、AI・DX・2024年問題・発注者リテラシー向上という複数の力によって、今後10年で大幅に淘汰されていく。

それは業界にとって健全な変化だ。
管理コストが圧縮された分が、発注者への価格還元と職人への適正報酬に使われる世界が来てほしい。

一方で、職人ネットワークを持ち、現場で判断でき、発注者との信頼を積み上げてきた施工管理者・施工管理会社には、AIにはできない本物の価値がある。
建設業のDX実施率はまだ11.4%。変化の初期段階で動けるかどうかが、10年後の立ち位置を決める。

建設業界のDX化・AI活用については、以下の関連記事もあわせて読んでみてほしい。

【第2回】AIで施工管理の仕事は消えるのか——DX時代に変わる建設業の働き方

【第1回】建設業は情弱ビジネスなのか——施工管理会社が独占する見えない情報の正体

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