既存建物の壁面に設置可能!ペロブスカイト太陽電池が拓く改修工事の新時代

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建築施工管理技士/宅地建物取引士/Webエンジニア
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・商業施設改修・修繕200件、マンション大規模修繕15棟
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既存建物の壁面に設置可能!ペロブスカイト太陽電池が拓く改修工事の新時代
この記事でわかること
  • ペロブスカイト太陽電池の基礎知識と国産技術としての強み
  • 既存建物の改修工事での実用化の可能性
  • 積水化学・パナソニック・東芝など主要メーカーの最新動向
  • 国・自治体の導入目標と支援策
  • 車載や高速道路など多様な活用事例
  • 施工管理者から見た2025年以降の展望

2026年、日本発の次世代太陽電池であるペロブスカイト太陽電池が実用化の段階を迎えた。積水化学は2025年の事業化を明言し、パナソニックも2026年からの本格参入を表明している。

建設業界が注目しているのは、既存建物の壁面や耐荷重の小さい屋根にも設置できる点だ。従来のシリコン系太陽電池では不可能だった場所に、軽量で柔軟なペロブスカイト太陽電池なら設置できる。

改修工事での実用化の可能性と各メーカーの最新動向、今後の展望をまとめた。

ペロブスカイト太陽電池とは

ペロブスカイト太陽電池のイメージ

ペロブスカイト太陽電池は、2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発明した日本発の次世代太陽電池である。ペロブスカイト結晶構造を持つ化合物を発電層に使い、従来のシリコン系太陽電池とは全く異なる特性を持つ。

従来型との決定的な違い

項目シリコン系太陽電池ペロブスカイト太陽電池
重量約10kg/㎡約1kg/㎡(10分の1)
厚さ30〜40mm0.031mm(約100分の1)
柔軟性硬質・曲げられない柔軟・曲面対応可能
製造温度1000℃以上150℃以下
変換効率約20%約15%(現在)
設置場所屋根・地上限定壁面・窓・曲面も可能

シリコン系が重量約10kg/㎡、厚さ30〜40mmなのに対し、ペロブスカイトは重量約1kg/㎡、厚さ0.031mmと圧倒的に軽く薄い。シリコン系は硬質で曲げられないが、ペロブスカイトは柔軟で曲面にも対応できる。製造温度も、シリコン系が1000℃以上必要なのに対し、ペロブスカイトは150℃以下で製造可能だ。

変換効率は現在約15%とシリコン系の約20%に劣るが、設置場所の選択肢は圧倒的に広い。シリコン系が屋根や地上に限られるのに対し、ペロブスカイトは壁面、窓、曲面にも設置できる。

輸入に頼らない国産技術の強み

主原料のヨウ素は日本が世界シェア第2位で約30%を占め、チリに次ぐ生産量を誇る。日本には世界の埋蔵量の約8割に相当するヨウ素が存在すると推定されている。

シリコン系太陽電池の主要部材を中国などからの輸入に頼る現状と比べ、エネルギー安全保障上の大きな利点となる。2025年10月の所信表明演説で政府は、原子力やペロブスカイト太陽電池を始めとする国産エネルギーの重要性に言及し、国家戦略として位置づけた。

国産技術としての3つの強み
  • 原料の国内調達 ヨウ素の世界シェア第2位、安定供給が可能
  • サプライチェーンの強靭化 特定国への依存を回避
  • 技術開発の優位性 発明国として特許・ノウハウを保有

既存建物の改修工事での実用化

建物改修工事のイメージ

建設業界として最も注目しているのは、ペロブスカイト太陽電池が既存建物の改修工事に応用できる点だ。

改修工事で設置可能な場所

設置場所従来型の課題ペロブスカイトの利点
建物外壁重量で設置不可軽量で壁面に直接設置可能
既存の窓設置場所なし内窓として後付け可能
築古ビルの屋根耐荷重不足で設置不可1/10の重量で設置可能
曲面屋根硬質パネルで対応困難フィルム型で追従可能
防音壁設置場所として想定外軽量で設置可能

従来型では重量のため建物外壁に設置できなかったが、ペロブスカイトは軽量で壁面に直接設置できる。既存の窓も、内窓として後付け可能だ。築古ビルの屋根は耐荷重不足で設置不可だったが、10分の1の重量なら設置できる。硬質パネルでは対応困難だった曲面屋根も、フィルム型なら追従できる。防音壁のような従来は想定外だった場所にも設置可能だ。

実際の改修事例(2023〜2025年)

積水化学とNTTデータは2023年から、NTT品川TWINSデータ棟外壁で国内初の既存建物外壁への設置実証実験を行っている。地上12階建てのビル外壁にフィルム型ペロブスカイト太陽電池を設置し、垂直面での発電効率や塩害地域での耐久性を検証中だ。

YKK APと千代田区は2024年7月から10月まで、秋葉原駅前広場で実証実験を実施した。既存建築物を想定したトレーラーハウスに、ペロブスカイト太陽電池を装備した内窓を設置。発電した電力で施設内のエアコン、PC、照明を稼働させる実証実験を75日間行った。

横浜市は2024年12月から、AGC株式会社と連携し、横浜市庁舎アトリウムで既存建築物の窓に後付け可能な次世代型太陽電池の実証実験を開始している。

ぱんたロイド
既存建物の壁面に後付けできれば、改修工事の選択肢が一気に広がる。従来は屋根しかなかった選択肢が、壁面、窓、防音壁まで使えるようになるね

主要メーカーの最新動向(2025年)

積水化学工業 2025年事業化を明言

積水化学工業はフィルム型ペロブスカイト太陽電池の開発で先行し、2024年12月に2025年の事業化を明言した。神戸空港、学校体育館、静岡県清水港など、2025年に入ってから複数の実証実験を新たに立ち上げている。

積水化学の主な実証実験(2025年)
  • 神戸空港 国内初の空港制限区域内での設置、耐風性能・耐候性を検証
  • 学校体育館 アーチ型屋根への設置性・耐久性・発電性能を検証
  • 静岡県清水港 沿岸部での耐風圧・塩害環境下での耐久性を1年間検証

パナソニックホールディングス 2026年本格参入

パナソニックはガラス型ペロブスカイト太陽電池の建材一体型製品を2026年から販売開始予定だ。大阪・関西万博のパビリオンにアートデザインを施したペロブスカイト太陽電池を展示し、意匠性の高さをアピールした。

東芝エネルギーシステムズ タンデム型で高効率化

東芝はペロブスカイトとシリコンを組み合わせたタンデム型の開発に注力している。2025年から阪神高速の高架下や建築物壁面で実証実験を開始し、従来のシリコン太陽電池との発電量比較を行っている。

トヨタ×エネコート 車載用で変換効率30%達成

トヨタ自動車と京都大学発ベンチャーのエネコートテクノロジーズは、2025年1月に車載用ペロブスカイト太陽電池で変換効率30.4%を達成した。一般的な自家用車の年間走行距離の3分の1を太陽光でまかなえる計算になる。

国・自治体の取り組み 2040年までに20GW導入目標

経済産業省が2024年11月に公表した次世代型太陽電池戦略では、2040年までにペロブスカイト太陽電池を20GWの発電規模まで普及させる目標が示されている。

年度発電コスト目標生産体制目標
2025年20円/kWh事業化開始
2030年14円/kWhGW級の量産体制構築
2040年10〜14円/kWh20GWの導入規模達成

自治体の先進的な取り組み

横浜市は2023年2月に桐蔭学園と連携協定を締結し、市庁舎アトリウムや鶴見区役所など複数の公共施設で実証実験を実施している。

東京都は2025年8月から臨海副都心のテレコムセンタービルで、建材一体型太陽光発電内窓の実装検証を開始した。

静岡県は2025年4月から清水港沿岸部の県有施設で、沿岸部での耐風圧と塩害環境下での耐久性を検証している。

車・高速道路・インフラへの活用

車載太陽電池のイメージ

自動車への搭載 充電頻度を大幅削減

トヨタ自動車とエネコートテクノロジーズは2023年から車載用ペロブスカイト太陽電池の共同開発を進めている。薄く軽いため自動車の屋根などの曲面形状に加工しやすく、車体のデザインとマッチしやすい。

2.0平米のEVルーフに変換効率18%の太陽電池を搭載した場合、太陽光による発電量だけで1日16km走行可能になる。近距離利用が中心なら、ほぼ充電不要で運用できる計算だ。

高速道路・インフラ施設への設置

東芝エネルギーシステムズは2025年から阪神高速の高架下にペロブスカイトとシリコンのタンデム型太陽電池を設置する実証実験を開始した。高架下という従来は活用が難しかった空間を、発電スペースとして有効利用できる。

積水化学工業も新幹線の防音壁への設置実証実験を進めており、インフラ施設の未利用空間を活用した発電が期待されている。

プロフィール用
高速道路の防音壁や高架下は今まで発電には使えなかった空間だけど、ペロブスカイトなら軽量で曲面対応できるから活用できるようになるね

施工管理者から見た2026年以降の展望

施工管理者として、ペロブスカイト太陽電池の実用化には大きな可能性を感じている。特に改修工事の現場では、今後大きな変化が起こると予想される。

改修工事で期待される変化
  • 築古ビルの省エネ改修 耐荷重不足で太陽光発電を諦めていたビルも、壁面・窓への設置で対応可能に
  • 意匠性の向上 色や透明度を調整できるため、建物のデザインを損なわずに設置可能
  • 工期の短縮 軽量で施工が容易なため、従来より短期間で設置完了
  • 部分交換の容易性 フィルム型は連結や部分交換が容易で、長期的な保守性に優れる

課題と今後の展望

ただし現時点では耐久性が5〜10年で、コストもシリコン系の2〜3倍と課題が残る。技術開発が進めばこれらは解決される見込みだ。

2030年にはGW級の量産体制が構築され、コストも大幅に下がると予測されている。改修工事の現場で本格的に普及するのは2030年代に入ってからになるだろう。

まとめ

ペロブスカイト太陽電池は日本発の技術として、輸入に頼らないエネルギー自給率向上の切り札となる。軽量で柔軟という特性により、既存建物の壁面、窓、屋根など、従来は活用できなかった場所に設置可能だ。

2025年は積水化学工業の事業化元年となり、2026年にはパナソニックも本格参入する。改修工事の現場では2030年代に入ってから本格的な普及が始まると予想される。

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本記事の情報は2025年12月時点のものである。技術開発の進展により、内容が更新される可能性がある。

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