中古住宅の見えないリスク──宅建士が教える“契約前に見るべき場所”5選
「重要事項説明だけでは安心できない」
中古住宅の購入は、人生で数少ない大きな買い物の一つです。
購入後に「こんなはずじゃなかった…」と後悔する声の多くは、契約前に“見ていなかった部分”に問題があったというものです。
たとえば、私が宅建士として立ち会ったある取引では、購入後に天井裏から雨漏り跡が見つかり、数十万円の追加工事が発生しました。
この記事では、現場目線と宅建士の視点を交えて、事前確認でリスクを減らすためのポイントをご紹介します。
① 屋根裏と床下──見えない場所こそ要注意
屋根裏や床下には、雨漏りの痕跡や断熱材の劣化、シロアリ被害など、契約書では分からない劣化のサインが現れます。
インスペクション(建物状況調査)を実施していない物件では、ここが最も盲点になりがちです。
確認する際は、天井裏の木材にシミや黒ずみがないか、床下の土台や束石が濡れていないかに注目しましょう。
② 外壁のクラック──「髪の毛ほど」でも見逃すと大損
外壁にヘアクラック(細いひび割れ)がある場合、将来的に漏水や剥落のリスクにつながることがあります。
売主が補修していない場合、それが買主の負担で発生する可能性も。
外壁塗装が新しくても、下地の劣化を隠しているケースがあるため、見た目に惑わされず注意深くチェックしましょう。
③ バルコニー防水──「見た目で安心」は危険
バルコニーの床面(FRPやシート防水など)は、表面がきれいでも下地が劣化しているケースがあります。
防水層の浮きやひび割れは、漏水による内装損傷やカビの原因になります。
点検の際は、「排水口の詰まり」や「防水層の立ち上がりの剥がれ」にも目を向けましょう。
④ 給排水配管の劣化──表からは見えないライフライン
築20~30年以上の物件では、給水管・排水管の腐食・詰まり・漏水が多く見られます。
古い鉄管や鉛管では赤水・水圧低下も起きやすく、全交換が必要になることも。
配管は床下や壁内に隠れているため、点検口や露出配管は必ず確認しましょう。
⑤ 境界と越境物──「隣の木」が後の火種に
境界標がない・越境物(塀・樹木・雨樋など)がある物件では、引渡し後に隣地トラブルが発生するリスクがあります。
境界確認書や筆界確認書が用意されていない場合は、現地で実測と写真記録を残すのが理想です。
宅建士ができること・できないこと
宅建士は「契約上のリスクを説明する」立場であり、建物の劣化や構造の診断は建築士やインスペクターの専門領域です。
宅建士の説明義務にあるのは「インスペクションをやっているかいないか」「測量をしているかいないか」程度。していない場合の理由やデメリットまでは義務になりません。(もし聞かれたら経験則で答える程度)
不安がある場合は、契約前に現地確認+第三者のチェックを検討しましょう。
まとめ:「契約書で安心」ではなく「現場で納得」を
中古住宅の購入では、「見える部分」と「見えない部分」の両方をチェックすることが重要です。
そして、“見えない部分”の確認を怠ると、将来の大きな修繕費やトラブルにつながります。
宅建士として書類の整備も重要ですが、現地での確認が何より大事。
「紙の説明だけで契約する時代」は終わり。
「現場で納得してから契約する」ことが、後悔のない不動産購入の第一歩です。