AIで施工管理の仕事は消えるのか?DX時代に変わる建設業の実態

この記事を書いた人

建築施工管理技士/宅地建物取引士/Webエンジニア
・2級建築施工管理技士(取得年:2024年)
・宅地建物取引士(取得年:2020年)
・改修工事施工管理歴:6年(2018年〜現在)
・商業施設改修・修繕200件、マンション大規模修繕15棟
・不動産業務経験:買取再販・売買仲介 3年
・Mac活用13年

AIで施工管理は消えるのかを考える

この記事でわかること

  • 建設業のDX化の現状と、i-Construction 2.0が目指す「省人化3割」の実態
  • 大手ゼネコンが実際に導入しているAI・ロボット技術の具体例
  • 施工管理業務のうちAIで代替できるものとできないものの明確な違い
  • DX化によって管理コストはどこまで圧縮できるのか、現場からの実感値

【第1回】建設業は情弱ビジネスなのか——施工管理会社が独占する見えない情報の正体

「施工管理はAIに消される職業だ」という話を、ここ数年でよく聞くようになった。

私個人的な意見ではあるが、半分は当たっていて、半分は外れていると思っている。

「消える業務」と「消えない業務」が明確に分かれているのに、それをひとまとめに語るから話が混乱する。
怖いのはその区別をしないまま現状維持しようとすることだと思っている。

この記事では、最新のDXデータと大手ゼネコンの実例を踏まえながら、施工管理という仕事がこれからどう変わるのかを整理する。

建設業のDX化——遅れの実態と急加速する変化

AIで施工管理は消えるのかを考える

まず現状のデータから入る。建設業のDX遅れは、数字で見ると相当に深刻だ。

IPA(情報処理推進機構)の「DX白書2023」によれば、
建設業で「DXに取り組んでいる」企業はわずか11.4%で、全業種の中で際立って低い水準にある。

BuildApp Newsの2025年調査でも、全社的にDXが進んでいる建設企業は約10.3%にとどまり、3割超が「未着手」と回答した。

建設業のIT投資比率は売上高の1%未満が6割以上を占めており、自動車・航空宇宙業界の3分の1以下という数値もある(McKinsey 2017年)。

世界に目を向けると、建設業の労働生産性成長率は2000〜2022年で年平均わずか0.4%であり、全世界経済の平均2.8%を大幅に下回る(McKinsey 2024年)。

日本の建設業の名目労働生産性は就業者1人あたり638万円で、全産業平均814万円の約78%、製造業1,035万円の約62%にとどまっている(日本生産性本部、2022年データ)。

一方で、公共工事を中心にDX化は急速に進んでいる。

国土交通省が推進するi-ConstructionのICT施工採用率は、2016年の1.6%から2022年に78.2%まで拡大した。
2024年4月に策定されたi-Construction 2.0では、2040年度までに「省人化3割・生産性1.5倍」を目標に掲げており、BIM/CIMは2023年度から小規模を除く全公共工事で原則適用となった(国土交通省:i-Construction推進施策)。

ぱんたロイド
「DX遅れてる」と「公共工事ではICT化が急加速してる」が同時に起きてる。民間の小規模工事は取り残されていて、そこが改修工事メインの自分たちの仕事領域でもある。

大手ゼネコンのAI活用最前線——現場で起きていること

大手ゼネコンと建設業中小企業のAI活用の現実

DXが進んでいる現場では、具体的に何が起きているのか。
大手ゼネコンの実例を見ると、変化のスピードがよくわかる。

鹿島建設は「A4CSEL®(クワッドアクセル)」システムを開発し、成瀬ダム建設現場で建設機械14台を完全自動化した。
400km離れた東京の拠点から3名のITパイロットが遠隔監視・自動運転で操作するという、従来の施工管理の概念を根底から変える取り組みだ。

竹中工務店は画像認識AIによる工事写真の自動分類システムを導入し、1人あたり毎日約2時間の効率化を実現している。

清水建設は「Shimz Smart Site Analyzer」として3D LiDAR・AI・GNSSによるリアルタイム運土管理を実装し、現場巡回にかかる時間を往復4時間から30分まで削減した。

大林組はスマートフォンの画像認識AIによるコンクリートスランプ管理を実用化している。

これらは大手ゼネコンの最先端事例であり、中小の改修工事会社が即座に同じことをできるわけではない。
ただ、こういった技術が「存在する」という事実は、5〜10年後の業界標準を示している。

中小規模の現場でも今すぐ使えるDXツール
  • ANDPAD:23.3万社・68.4万人が利用、施工管理クラウドで8年連続シェアNo.1。写真整理・工程管理・報告書作成を一元化
  • Photoruction:導入30万プロジェクト超、「報告作業時間99%削減」の効果を公表
  • SPIDERPLUS:東証グロース上場、契約2,117社・売上高40.7億円(前年比64%増)
  • ChatGPT / Gemini:議事録・報告書の文章生成、不具合原因の仮説整理に即活用可能
  • iPad + 図面アプリ:現地での図面確認・手書きメモの電子化、持ち込みコストが低い

私自身、iPad mini 6を現場で使い始めてから、施工写真の整理・報告書のたたき台・図面確認にかける時間は、いまだに紙を使わないと仕事ができない人に比べて、半分以下になった。

クラウドで工程・写真を一元管理し、ChatGPTで議事録の文章を生成する。
他の人が深夜まで残業していた月末の書類作成が、定時内に終わる。

これは大げさでも理想論でもなく、今すぐ実現できることだ。

AIに代替される業務・されない業務——「管理系」と「判断系」で考える

AIに代替される仕事と残る仕事について

施工管理の業務を
「管理系(手順と情報処理で完結する)」と
「判断系(経験と現場感が必要)」に分けると、
AIによる代替可能性がはっきりと見えてくる。

業務の種類具体的な内容AI・DX代替可能性現状
工程管理工事スケジュール作成・進捗確認高いすでにツールで対応可
原価管理材料費・労務費の集計・予算管理高い自動化しやすい領域
報告書・書類作成施工写真整理・工事日報・完了報告高いAIが最も得意な作業
業者手配・段取り材料発注・職人スケジュール調整中程度プラットフォーム化で進行中
軽微な不具合調査内装・外構・漏水の初期診断中程度画像AIで補助は可能
安全管理足場点検・作業員の安全確認・緊急対応低い人の判断が不可欠
品質判断(構造・耐久性)コンクリート強度・防水層の劣化診断低い経験と現場感が必要
発注者との折衝・合意形成クレーム対応・設計変更の提案・説明極めて低い信頼関係は人にしか築けない

「代替可能性が高い業務」が施工管理の仕事の中でかなりの割合を占めていることがわかる。

工程管理・原価管理・書類作成は、今すでに多くのDXツールが対応している。
施工管理求人.comの調査でも「今後10年で110万人の技術者不足」というデータがあるが、これはDXによる省人化が進む中でも、判断系業務を担える人材が不足するという意味だ。

「5人の仕事が1〜2人でできる」は現実になる

私が現場で体感している感覚では、
「以前は5人でこなしていた管理業務が、
ツールを使いこなせば1〜2人で回せるレベル」
には近い将来なると思っている。大げさではなく、部分的にはすでにそうなりつつある。

McKinseyの試算では、建設セクターが他産業並みに生産性を向上できれば、付加価値を推定1.6兆ドル押し上げられるとしている(McKinsey:Reinventing Construction Through a Productivity Revolution)。

ただし「できる」と「やる」の間には大きなギャップがある。DX実施率11.4%という現状がそれを物語っている。

現場管理費として月300万円かかっていた現場が50万円で回せるようになれば、差額の250万円は「発注者への値下げ」か「職人への適正報酬」に使える。

現状、建設技能者(型枠大工・左官・防水工事等)の労務単価は2015年比で1.3〜1.5倍に上昇しているが、それでも若手が入ってこないのは、適正な報酬が末端まで届いていないことも一因だ(国土交通省:建設業の労務単価推移)。

施工管理会社が管理コストをDXで圧縮することで、職人に回るお金を増やせる余地は確実にある。

DX化が進む中で施工管理者が陥りやすい2つの誤解
  • 誤解①「AIツールを使えばそれでいい」:ツールは手段であり、それで生まれた余剰時間を判断業務・信頼構築に使えなければ意味がない。ツールを入れただけで現場への投資を減らす会社は、逆に品質低下リスクを高める
  • 誤解②「うちは小規模だからDX不要」:小規模工事こそ書類作成の効率化による時間創出の効果が大きい。ANDPADやPhotoructionは小規模事業者向けプランも充実しており、月数万円から導入できる

建設業の人手不足は深刻——だからこそDXが急務

DX化が急務である理由は、生産性向上だけではない。深刻な人手不足も大きな背景だ。

建設業の就業者数は1997年のピーク685万人から2024年には477万人まで約30%減少した。
年齢構成では55歳以上が約37%を占め、29歳以下はわずか約12%にとどまる(日本建設業連合会データ)。
有効求人倍率は2024年9月時点で5.20倍(全産業平均1.24倍の4倍超)、施工管理職では5.67倍に達している(新建ハウジング:建設業有効求人倍率5.2倍)。
国土交通省の試算では2025年に約90万人の労働人口が不足するとされている。

この人手不足の文脈で見ると、DX化は「コスト削減」というより「そもそも人が足りないから省人化するしかない」という話でもある。

施工管理者1人あたりの担当現場数が増える中で、AIツールを使わない選択肢はもはやない。

まとめ——AIは施工管理を「消す」のではなく「変える」

書類を作る人から決断する人へ。建設業でAIを活用しよう

AIやDXが進む中で、施工管理という仕事が完全になくなることはない。

ただ、
「書類を作る施工管理者」
「工程表を作る施工管理者」
という役割の価値は急速に低下する。

代わりに
「現場で判断できる施工管理者」
「発注者と職人の間で信頼を結べる施工管理者」
の希少性が上がる。

消えるのは施工管理という仕事ではなく、
「管理系業務だけをやっている施工管理者・施工管理会社」だ。

次の記事では、この流れを踏まえて「これからの施工管理会社が持つべき3つの条件」と「2024年問題・働き方改革が業界構造にもたらす変化」を具体的に整理する。

【第3回】施工管理会社が生き残るための条件——2024年問題・DX・多角化の三つ巴をどう乗り越えるか

【第1回】建設業は情弱ビジネスなのか——施工管理会社が独占する見えない情報の正体

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