インスペクションを入れなかったせいで…──中古住宅購入の“見えない後悔”
「リフォーム済みだから大丈夫」──その安心、根拠はありますか?
中古住宅を購入する際、「内装がキレイ」「すぐ住める」と見た目の印象だけで判断しがちですが、実際にはインスペクション(建物状況調査)を省略したことで後悔するケースが少なくありません。
本記事では宅建士としての立場から、実際にあったトラブルとともに、インスペクションの必要性と導入のメリットを解説いたします。
1. インスペクションを省略したことで発生した実例
ある購入者は、リフォーム済みの中古住宅を「即入居可」として契約。しかし数ヶ月後、壁の裏からカビ臭が発生。天井裏を開けると、断熱材のカビと雨漏り跡が見つかり、修繕費は50万円超に。
これは宅建士として私が関わった、実際のケースです。
2. インスペクションとは? その役割と限界
建築士等が第三者の立場で建物の劣化・構造状態などを診断する調査です。目視や計測を用いて、シロアリ・雨漏り・傾きなどのリスクを評価し、買主に報告書として提供します。
制度化されていますが、売主に義務はなく、買主が希望しなければ実施されません。
宅建士が行う重要事項説明でも、実施されているかどうかを説明するだけ。
3. 「見た目がキレイ」=「中も安心」ではない
不動産業者の中には、「見た目がキレイだから大丈夫」と言ってくることもあります。しかし、以下のような物件では特に注意が必要です:
- 築20年以上の木造戸建
- リフォーム済だが施工者が不明
- 再建築不可・調査が難しい立地
これらはトラブルを未然に防ぐ“検査すべき案件”の典型です。
4. 省略による実害の例
- 床下の漏水 → カビ・木部腐食へ
- 天井裏の雨染み → 入居後に雨漏り発生
- 基礎クラック → 耐震補強費が発生
- 建物傾き → 家具が滑る・不便な生活に
5. 費用と実施の流れ
相場は5〜7万円程度(報告書付き・延床30坪目安)。
点検口の新設(天井に穴を開ける)が必要なこともあるため、売主の許可が前提です。契約前に行うことで、契約不適合責任の明文化にも役立ちます。
6. 宅建士としての経験談と後悔
現場に立ち会ってきた宅建士として、後から「インスペクションしておけば良かった」と後悔する買主を見てきました。
インスペクションは「買わないための判断材料」ではなく、「安心して買える根拠」になるものです。
まとめ:安心をお金で買えるチャンスは契約前だけ
インスペクションは義務ではありませんが、不安の可視化と安心の裏付けとして、最も信頼できる手段です。
宅建士は契約書をチェックしますが、建物の構造・劣化をチェックできるのはインスペクターだけ。
大きな買い物だからこそ、契約前に「安心」を確保しましょう。